2014年1月27日月曜日

ラトビア加盟、18カ国に 財政健全化 南欧のお手本

バルト三国のラトビアが1日、ユーロを導入し、ユーロ圏が18カ国となった。ユーロ圏は拡大により、債務危機で一時崩壊も危ぶまれた単一通貨の信頼回復を印象づけたいところ。導入のために厳しい改革を断行してきたラトビアが、財政健全化に取り組む南欧諸国の「模範」となることも期待する。ただ、「ロシアマネー」など不透明な資金流入への警戒もあるようだ。
 「ラトビアの経済発展に大きなチャンスだ」。ラトビアのドムブロフスキス首相は1日未明、首都リガで行われた記念式典で、ユーロ紙幣を自動現金預払機から引き出した後、そう強調し、ユーロ圏入りが人口約200万人の小国の一段の発展につながると期待した。
 ◆旧通貨への深い愛着
 ユーロ導入に対して国民には抵抗感が強い。世論調査では約半数が導入に反対していた。理由には債務危機によるユーロへの不安や導入による物価高への懸念のほか、旧通貨ラトへの深い愛着があるからだ。
20世紀前半に旧ソ連に併合されたラトビアはその後、ルーブルを使ってきたが、1991年の独立後にラトを再導入した。自国通貨はそのため、独立の象徴の意味を持つ。「ラトはわれわれのものだが、ユーロはそうでない」。フランス通信(AFP)が伝えた国民の声からはその思い入れがうかがえる。
 それでもラトビア政府がユーロ導入に邁進(まんしん)してきたのは、ロシアに対して強い警戒心があるためだ。バルト三国は2004年に欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)に加盟。東欧では債務危機でユーロ導入を慎重に見極める姿勢が目立ったが、バルト三国ではエストニアが11年に採用。リトアニアも15年の実現を目指す。
 「関税同盟」を通じロシアが旧ソ連圏への影響力を高めようとする中、昨年末にはその圧力でウクライナのEU統合路線が暗礁に乗り上げた。「ロシアは変わらない。だからEUとの団結が重要だ」。ウクライナ情勢を受けラトビアのビルクス財務相はユーロ圏入りの意義を強調している。
とはいえ、ラトビアのユーロ導入実現が平坦(へいたん)な道のりだったわけではない。05~07年には2桁の経済成長率を誇ったラトビアは08年に世界的な経済危機の影響を大きく受け、EUや国際通貨基金(IMF)の支援を受ける事態に陥った。09年の経済成長はマイナス18%にも落ち込んだ。
 政府はその後、ユーロとラトのペッグ(連動)制度を堅持しながら、公務員給与や年金の削減などの改革を断行。その結果、財政赤字の対国内総生産(GDP)比率は09年の約10%から12年には約3%に縮小し、経済成長率も11~12年は5%台に回復。13、14年も4%台の成長を見込む。
 ◆キプロス化の懸念も
 バローゾ欧州委員長はラトビアのユーロ導入について、「ユーロ解体が予期されたのはそれほど昔ではないのに、今、われわれは新パートナーを迎えた。これほど共通通貨の回復力を示すものはない」と歓迎。ラトビアが果たした改革努力も、「ユーロ圏の国々が実行中のものに匹敵する」と称賛した。
一方で不安を指摘する向きもある。“第2のキプロス化”だ。法人税の税率の低さと優遇税制などで外国資金を呼び込んできたラトビアでは、金融機関が保有する預金のうち、半分近くが国外居住者のもので、過去の経緯からロシアなど旧ソ連諸国がその多くを占めるとされる。
 地中海の国キプロスは昨年、ロシアマネーを中心とした海外資金で肥大化した金融機関の危機を受け、EU支援をめぐり、大きな混乱に陥った。国民以外の不透明な資金まで救うことになることをEUが懸念したためだった。ラトビアに対しても、「ユーロ導入後に疑わしい金の流入が急増する」(組織犯罪専門家)との指摘もある。ラトビア側もこうした懸念を踏まえ、資金洗浄などへの対策強化にも取り組んでいるとされ、「ユーロ新参者」の信頼獲得に努めているという。
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