2013年6月15日土曜日

日本経済:成長戦略、高い目標並ぶ 実効性高める追加策焦点

政府は5日、産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)を開き、成長戦略の素案を示した。分野ごとに政策と具体的な数値目標を盛り込んだ。包括的な成長促進策として方向性は評価できるが、高い目標を掲げる一方、政策は小粒な印象が強い。2020年以降の長期目標も多く、脱デフレ実現に向けた道筋は見えない。実効性のある政策を追加できるかが問われる。

 安倍首相は5日午前、規制改革会議から健康食品の効能表示解禁などを盛り込んだ答申を受け取った。その後、成長戦略第3弾の演説で一般医薬品のネット販売の解禁や新しい特区制度の創設を発表した。成長戦略は来週の閣議決定を目指す。

 素案は今後10年間平均の名目経済成長率3%、物価変動の影響を除いた実質成長率2%という目標を示した。民主党政権が12年の成長戦略で出した目標と全く同じで、潜在成長率が1%未満に低下したとされる日本経済が達成できるかどうかには疑問の声が多い。

 消費者物価の上昇を伴う成長を実現するには日銀の金融緩和に加え、潜在成長率を底上げする政府の成長戦略の支えが欠かせない。参院選前には痛みを伴う政策をとりにくいとしても、参院選後もにらんで目標実現に向けた具体策を詰めることで「成長戦略は力不足」という金融資本市場の評価を覆す必要がある。

■産業の代謝促す
 成長戦略の第1の柱は「産業再興」。新たに起こした企業数が全体に占める割合を表す開業率と、事業をやめた企業の割合を表す廃業率をともに欧米並みの10%台に高め、産業の新陳代謝を促すことを目標に据えた。

 だがベンチャー育成の難しさは過去の実績で証明ずみだ。直近統計の04~06年度は開業率が5.1%、廃業率が6.2%。統計のある1970年代以降、どちらも10%を上回ったことはない。倒産しても経営者の財産が全額没収されないように保証制度を見直すだけでは、目標実現への道筋は見えてこない。

 第2の柱の「戦略市場創造」で注目が集まるのは農業だ。今後10年間で農村の所得を2倍にする。生産コストを下げ、都道府県が農地を集約して大規模経営者に貸し出す制度を新設する。ただ10年で倍増するには年間7%の伸びが必要。環太平洋経済連携協定(TPP)などで関税引き下げが進むだけにさらなる競争力向上策が欠かせない。

 第3の柱が国際展開だ。外国から日本への直接投資残高は20年に35兆円と現在の2倍に増やす。対日直接投資の倍増は小泉政権が03年に掲げて5年でほぼ達成したが、08年のリーマン・ショック以降の残高は横ばいだ。

 政府が新たに設ける国家戦略特区で、どれだけ踏み込んだ規制緩和に取り組めるか。さらには特区に限らず、大胆な規制緩和を全国規模で実現できるかが問われる。民間活力を生かす発想も見られるが、官業改革の本丸である日本郵政に切り込む視点は欠落している。

■進捗点検が課題
 民主党が12年に決めた成長戦略は20年の目標とともに、15年時点の中間目標を置いた。しかし今回の成長戦略は5年以上先の目標が目立ち、各省庁から見ればはるか先まで責任を問われない約束だ。

その間に政権が代われば雲散霧消する可能性もある。経済財政諮問会議の民間議員を務める東芝の佐々木則夫社長は「(計画、実行、点検、修正の)PDCAサイクルを回すことが必要」とし、進捗をしっかり管理すべきだと語る。

 甘利明経済財政・再生相は会議後の記者会見で「政労使が率直に議論できる場を今秋をめどに設けたい」と述べ、新たな会議で経営者に賃上げを求めていく考えを示した。ファミリーマートの中山勇社長は「問題は輸出企業中心の業績回復が内需企業に波及し、賃金上昇や雇用の安定によって消費が拡大するかどうか。政策の実行力に期待したい」と指摘する。

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